耐震を検討しよう

2016/08/30

専門機関に聞く★管理組合の視点で管理組合をサポート〜日住協インタビュー2

後篇:管理組合から見た耐震化に向けた課題とは?

 

NPO日住協(特定非営利活動法人日本住宅管理組合協議会)は、マンションの管理組合の課題を、管理組合の視点で解決してきました(前篇:マンションの管理組合をサポートする日住協とは?)。後篇は、多くの管理組合をサポートしてきた視点から、「耐震化」をテーマにマンション耐震化の現状と課題、今後の取り組みなどについてお伺いしました。

 

‐「耐震化」について、マンションの管理組合の意識は高まっているのでしょうか?

会長の川上湛永さん(右)にお伺いしました

耐震改修促進法が改正され、マンションも耐震改修の指導対象となったことから、耐震診断の要望が増えました。会員の管理組合150のうち6割は旧公団住宅で、それらは壁式構造でを支える作りの「壁式構造」(参照:あなたのマンション、耐震改修しなくて大丈夫?注意すべきポイント4つ。)で地震に強い構造だったため、耐震化の必要はありませんでした。残りの4割のマンションは、地震に極めて弱いと診断されたマンションもあったのですが、耐震工事に至った事例はわずか3例です。

 

‐極めて地震に弱いと診断された場合は、建替工事も検討されるのでは?

古いマンションは、建築基準法が変わり、建てた当時は合法でも、今は違法となっている「既存不適格建築物」が多いんですよ。例えば、現在は8階建てだけど、今の建築基準法で建て替えると5階建てにしかならない、というマンションも多く、建替えは難しいですね。

 

‐となると、なぜ耐震化が進まないのでしょう?

様々な要因がありますが、まず第1に、資金が不足していること。大規模修繕で積立金を使い切っている管理組合がほとんどなので、耐震工事に回すお金は残っていません。住宅金融支援機構の耐震工事への融資制度もありますが、耐震工事が必要な築年数の古いマンションは、所有者も高齢化していることが多く、新たな借金を背負うことに心理的なハードルがあるようです。

‐他の要因は?

次に、合意形成が取れないこと。耐震改修促進法の改正で、大規模な耐震改修を行おうとする場合の決議要件が4分の3以上から2分の1以上になりましたが、それでもなかなか難しいですね。

理事長の上地光男さんにお伺いしました

例えば、耐震化のためにブレースを付ける工事を検討した場合、ブレースは低層階だけに付けることがほとんどです。そうなると、高層階には影響がないのに低層階だけに影響が出ることになるので、低層階の反発が起こります。また、立地が良く、物件を賃貸に出して高い賃料収入を得ている高収益マンションの場合、工事をすると借りる人がいなくなると、反対意見が出ることもあります。

 

‐工事をすると借りる人がいなくなると心配するのは、なぜですか?耐震工事をして、安心・安全な住まいになることで、逆に借りたい人が増えるのではないかと思うのですが…

そこが3番目の課題で、耐震化について、知識がないためのネガティブな意識があります。「耐震工事をした安全なマンションに住んでいるから、堂々と暮らせる」ではなく、「耐震工事をしなければならないようなマンションに住んでいることを言いたくない」との意識があるようです。 また、同様に、耐震工事をすると「窓から光が入らなくなって、暗くなる」「景観が悪くなる」「外観が台無しになる」など、否定的に捉えている人も少なくありません。

実は耐震工法はいろいろな種類や技術があり、外観を損なわず、日当たりも変わらない耐震工事をすることも可能なのですが、知識がないために、食わず嫌いのように最初から否定的に見てしまうのです。 住宅金融支援機構の住宅ローンは、耐震基準をクリアしているマンションだけを資産として認めています。つまり、耐震化されていないマンションにはローンが下りず、資産として認められていないのですが、そのあたりの知識や意識がまだまだ浸透していないと感じています。

 

‐日住協としては、今後、どのように耐震化をサポートしていきたいと考えていますか?

命を守る耐震化が必要なことは間違いないので、これらの課題を解決していくための情報発信に力を入れていきます。例えば、資金面の問題は、耐震改修のための資金は修繕用と別のお財布に積み立てたり、段階を追って耐震改修をしていく方法もあります。国や自治体の助成制度も刻々と変わっているので、正確な情報を入手し、取りまとめてわかりやすく発信することにも、一層力を入れていきたいですね。

 

また、管理組合が耐震工事に対して抱きがちな「日当たり」「景観」「資産価値」などの否定的な考え方も、的確な情報を提供することで払拭していきたいです。今後は、耐震化に対する考え方や方向性を、管理組合の視点で積極的に示唆していきます。

様々な管理組合をサポートしてきた専門機関だけあって、マンションの所有者視点での耐震化に向けた課題が明確じゃ!明確に見えた課題解決に向けて、今後、日住協が発信していく情報は見逃せないぞ!

耐震を検討しよう
ページの先頭へ